織姫は宇宙の中心に、月船天河、七夕のあひみむ秋のかぎりなきかな

7月7日は、七夕ですね。今日は、七夕の小ネタについてあれこれと考えます。

  カレー味のからあげ君がおいしいと言った記念日六月七日
 手帳のなかではじめに五・七・五・七・七の形になったのは、こういうものだった。次はこんなぐあい。
  「カレー味がいいね」と君が言ったから今日はからあげ記念日とする
 このほかにも七パターンぐらい記されているのだが、どうもうまくいかない。この後のメモをたどってゆくと、まず「カレー味」が却下。「しお味」になり「この味」になる。この時点で「からあげ」であることからも自由になり、「サラダ」が浮上してきた。なぜサラダであり、なぜ七月六日であるかは、まずS音の響き、ということがある。それから、季節としては初夏の感じがいいな、と思った。さわやかで、野菜のおいしいときでもある。大げさなメインディッシュでない点でも「サラダ」は気に入った。また、日付としては特別な日でないことが大切だ。七月七日では、恋の歌に付きすぎだろう。
 言葉を探しはじめてから、一週間ぐらいかかっただろうか。
  「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
 現実のできごとそのままではないけれど、心の揺れは、はじめにメモした言葉よりこもっているように思う。こういう嘘は、どんどんつくべきではないだろうか。

俵万智『短歌をよむ』より

今日はぐだぐだ能書き書かずに、小ネタをがんがん集めます。

「たなばた」の語源は、「棚機つ女たなばたつめ(はたを織る少女)」とされる。折口信夫によると、「棚」とは「神に近い生活をする者を、なほ人から隔離するのがたなの原義」。

日本には、七夕の起源となる物語として、室町時代の『御伽草子』の「天稚彦物語」などがある。天界にいって戻らない夫を妻が探しにいく話。このタイプの異郷訪問譚の起源はインドで、浦島太郎も同じ話を起源にもつ。星にまつわる神話については、「星の神殿」がおすすめ。

日本の七夕は男性が女性のもとに通うが、これは通い婚の影響。外国の七夕伝説や古い七夕伝説の原型は、女性が男性のもとに通うものが多い。七夕の主役は女性。

織女星ベガは0.03等級。これは北天一の明るさ。牽牛星アルタイルは0.77等級。ここにも77。

織女星ベガは地球の歳差運動によって、およそ1万2000年後には北極星となり、彦星がそのまわりを回ることになる。

織女星ベガと牽牛星アルタイルの距離は、15光年離れている。

七夕の日は晴れにくい。まだ梅雨だし当然か。94年以降の東京の七夕の夜の天気は、曇時々雨、雨一時曇、雨一時曇、晴、曇時々雨、晴、雷雨、曇、晴、曇時々雨、晴、曇。

韓国では、7月7日の朝の雨は「嘆きの雨」、昼の雨は「喜びの雨」、夜の雨は「別れ涙の雨」と言われており、七夕の日には雨がふったほうがよいとされる。

七夕は五節句の一つ。五節句とは、1月7日の人日じんじつ七草粥)、3月3日の上巳じょうし(ひな祭り)、5月5日の端午たんご(こどもの日)、7月7日の七夕、9月9日の重陽ちょうよう(菊の節句)。ちなみに11月11日はポッキー&プリッツの日

太陰暦では、必ず、毎月1日が新月(ついたち=月立ち)、3日目が三日月、7日目が上弦の月、15日が満月(十五夜)になる。したがって、七夕の日は必ず上弦の月が出ているので、古くはこれを舟に見たてた。「天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ」(柿木人麻呂かきのもとのひとまろ)。この舟に乗って御先祖様も帰ってくる。だから、七夕の1週間後は盂蘭盆うらぼん

「七夕」は秋の季語。俳諧では旧暦7〜9月が秋だからで、したがって「天河あまのがわ」も秋。「朝顔=秋」「スイカ=秋」「甘酒=夏」とならんで、無理のある季語の一つ。

「七夕」は英語で"the Star Festival"。まるでディズニーランドのアトラクションですな。

7月7日の、いわゆる十月十日後(262日後)は、3月26日。この日に生まれた子供は織姫と彦星の子供かもしれない。3月26日生まれの有名人は、野村沙知代など。

七夕は、もともと7月6日の夜から翌朝へかけておこなう行事だった。これは「クリスマスはいつから始まるか?」という問題と似ている。ユダヤ暦では、日没を日付の境目としていたため、クリスマス・イブの夜には既にクリスマスである。

七夕がテーマになった万葉集の歌。「かすみ立つ、天の川原に君待つと、い行き帰るに、すそ濡れぬ」。エロすぎ。

紀貫之には「ひととせに一夜と思へど七夕のあひみむ秋のかぎりなきかな」という歌がある。「一年に一晩とか言ってっけどさー、七夕のある秋ってずーっとやってくんだから、贅沢ゆーんじゃねーよ」という、毒男の共感を呼びそうな歌。

「セタ」という社名の会社がある。「七夕」と「セタ」は似ている。「夕刊」と「タモリ」も似ている。

Wikipediaによると、「フィクションの中の登場人物の誕生日」で最も多いのは5月5日だが、2番目は7月7日。以下、4月1日、1月1日、12月24日、8月1日、6月6日、9月9日、12月25日、2月14日、11月11日、10月10日、3月3日、8月8日。

この吹風日記が今日7月7日までに日記をつけた日数は、77日。