2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

あぶないテントウムシ、蒲公英・向日葵・玉蜀黍、緑はあきらめた

生きものの世界は色彩であふれています。なぜ動物たちはカラフルに着飾るのか、植物名のついた色名はどのぐらいあるのか、植物が緑色であることの謎など、今日は自然界の色彩にまつわるネタのあれこれについて考えます。 そこで真夏の日中になると、多くの昆…

アベェロンの野生児、学校という装置、「人になる」「ヒトである」

「アベェロンの野生児」が人間に戻ることを許されないのはなぜか。「狼少女」アマラとカマラというつくり話が消えないのはなぜか。今日は、野生児たちをめぐる人々の心の動きを考えることにより、近代という時代が生みだした私たちの隠れた願望について考え…

すべてのクレタ島人は嘘つきか、「痛くなッ」、見えないフレーム

「すべてのクレタ島人は嘘つきだ、と或るクレタ島人が言った」という文章は自己矛盾文としてよく知られています。ところが、これは自己矛盾文ではないのです。今日は、言葉を使ってものを考えるときに入り込んでくる暗黙の仮定について考えます。 これは一見…

「幸福とは何か」、幸福のパラドックス、答えられない問い

幸福とは何なのかを理解できれば、私たちの人生の大きな助けになることでしょう。しかし、はたして、この問いは答えられる問いなのでしょうか。今日は、「幸福とは何か」という問いが本質的に回答不能であるかもしれないということについて考えます。 京都の…

スライムが4,5匹現れた、曖昧な日本のruby、ピントを合わせる

日本語は曖昧な言語であるとよく言われます。しかし、曖昧さとは、単なる情報の欠落なのでしょうか。「二、三日」と「三日」で、前者だけがもつ意味というものはないのでしょうか。今日は、日本語の曖昧さを武器として使う可能性について考えます。 蕪村の有…

蛇足は蛇足ではない、ヘビのふともも、空を駆ける七色のヘビ

ヘビに足を描くのは、本当に余計なことなのでしょうか。ヘビなんてものを絵を課題にしたのはなぜでしょうか。そもそも、ヘビに足があってはいけないのでしょうか。今日は、「蛇足」という故事成語のあれこれを考えます。 楚に祠(まつ)る者あり。其の舎人(し…

死者600万人、劣化ウランはなぜ「問題」か、感覚はあてにならない

今まさに世界大戦に匹敵する死者が発生していることに多くの人が気づかないのはなぜか。カラシニコフ銃より劣化ウラン弾のほうが問題視されるのはなぜか。今日は、人間の計量感覚の錯誤から、「素朴な市民感覚」で社会問題を解決しようとする危険性について…

自分とは何か、頭がない私、「ひかりはたもち その電燈は失はれ」

「自分が自分である」ということを証明してくれと言われたら、どうすればいいのでしょうか。なぜ私たちは、自分の額に「肉」という文字がないと確信して生きているのでしょうか。今日は、自分が自分であることが何によって支えられているのかについて考えま…

ひよこの残骸、はじめてあふれる獣の涙、いつの日か出会うもの

人間は生きるために、他の生物を殺します。しかし、私は、例えば食事をすることが「残酷だ」と実感することができません。これは私がおかしいのでしょうか? 今日は、石垣りんの詩「くらし」を手がかりに、生と死の問題について考えます。 くらし 石垣りん …

諸君!私はやっぱり猫が好き、ボーイズラブと上様、風に乗る

「諸君、私は〜が好きだ」という言いまわしはネット上にどのぐらい種類があるのでしょうか? それは「やっぱり〜が好き」の場合とどんな違いがあるのでしょう。今日は、「やっぱり」という言葉の使い方を調べることで、世間の風を読む意識について考えます。…

神の居場所のない宇宙、ツンをデレにする理論、「影」にすぎない

宇宙が始まる瞬間、既存の物理法則はすべて破れてしまう。その「特異点」を解消しようとしたホーキングの卓抜した着想とは何か。今日は、特異点の解消における基本的アイデアを見ることで、不条理な世界で生きていくための勇気について考えます。 これはまた…

予習シリーズ、「女は馬鹿でいい」、すーっと脳に日本刀

私にはほとんど暴言にしか見えない文章が、『予習シリーズ』という中学受験用の超有名問題集に、掲載されています。今日は、トンデモな内容だからこそ際立つ熟練の文章の冴えとその際どさについて考えます。 絶対音感を養うのは結構である。それまで手がまわ…

「さざんか」と「ふいんき」、バッドノウハウ、国境の長いトンネル

「雰囲気」を「ふいんき」とする誤読は有名ですが、実はこれとまったく同じパターンで誤読され、しかも日本語として定着してしまった語があります。「さざんか」です。今日は言葉の誤用の背後にある「合理性」について考えます。 正しくは「情けは人のためな…

ディズニーランド、視覚の魔法、目を閉じて見るもの

「夢と魔法の王国」ディズニーランドは、さまざまなトリックを使って、私たちの視覚に魔法をかけています。今日は、その視覚トリックにはどんな意味があるのか、そしてディズニーランドが見せる夢とは何かについて考えます。 ディズニーランドという場所その…

雪月花の時、ドレミ〜ドレミ〜ソミレドレミレ、バベルの図書館

俊頼朝臣語りていはく、「白河院、淀に行幸ありけるに、五月ばかりのことにやありけむ、女房、殿上人の舟、あまたありけるに、暁になるほどに、向かひの方に、ほととぎす一声ほのかに鳴きて過ぐ。俊頼、一首詠ぜまほしくおぼえしに、女房の、舟のうちにしの…

手放すこと、この文章はだれが書いているのか?、信じること

私の好きな言葉に、「内心にひそむ確信を語れば、それは普遍に通ずる」という名言がある。アメリカの哲学者エマソンが『自己信頼』というエッセイで述べたもので、ものを考えたり、書いたりする際、いつも私の脳裏にあるのはこのエマソンの言葉である。自分…

天国の100万円アパート、ナウなヤングにバカウケ、KAWAII

そのため、「マンション」と呼ばれていればその名にふさわしい(つまり、その語の意味にかなった)ものが存在しているはずだと思い込む。これを逆に利用すれば、あまり立派とはいえない住宅でもそれを「マンション」とさえ名づけておけば、聞いた人は実際以…

女の子二人がベルです、『壮絶!処女軍団』、累卵の如きもの

みなさんは、学校で、主語・述語や文節について勉強した記憶があるでしょう。では、その「文法」の授業を聞いて、本当に日本語の正しい使い方が分かりましたか? 今日は、我々が教わってきた「文法」の意外な危うさについて考えます。 先ごろです。低学年の…

サンタは存在する、科学という魔法、ドーナツの穴

みなさんは、サンタクロースの真の力についてご存じない。結論を単刀直入に申し上げると、「サンタは存在する」と考えるのが科学的に正しいのです。今日は、科学的とは何か? そして、サンタが存在する理由について考えます。 わが家の家屋の構造上、煙突か…

ああ らりるれろ、Google、揺れる心

「ああ らりるれろ」という言葉を聞いて、どんな気持ちになりますか? 実はこれは、ある少女の死をうたった詩の中の一節です。今日は、私たちの心が言葉のネットワークとふれあうとき、そこで何が起きているのかについて考えます。 悼詩 室生犀星 ボンタン実…

自由とは何か、「GUITAR KIDS RHAPSODY」、心照らして

日本の禅寺での修行が、いかに厳しいものであるかは、よく知られている。修行は未明からはじまり、厳格に定められた時間割にのっとって、僧堂での読経、座禅、洗面、食事、作務、そのくりかえしで一日が終わる。すべての時間が行であり、顔を洗うにも、食事…

無数の「驚異」、赤い絵の具、数学とは何か

私が思うに、科学とは「万能」という名の魔法でもなければ「厳密性」といった堅苦しいものでもない。この世に存在する無数の「驚異」に対するひとつのアプローチの仕方なのである。特に生命科学は、目の前にある生命現象を「理解」したいという単純な欲求か…

影響の輪、「どうでもいい」、きみのバラ

詮ずるところ学問は、ただ年月長く倦ずおこたらずして、はげみつとむるぞ肝要にて、学びやうは、いかやうにてもよかるべく、さのみかかはるまじきことなり。いかほど学びかたよくても怠りてつとめざれば、功はなし。又人々の才と不才によりて、その功いたく…

本当に生きた日、ダイヤモンド、すべてを放つ

世界に別れを告げる日にひとは一生をふりかえってじぶんが本当に生きた日があまりにすくなかったことに驚くだろう 指折り数えるほどしかないその日々の中の一つには恋人との最初の一瞥のするどい閃光などもまじっているだろう 本当に生きた日は人によってた…

千分の一秒、「今」とはいつか、「機」に殉ずる

もういいよ、おじいちゃん、と僕は胸の中で何度も呟いた。 おじいちゃんに教えられた通り、僕は一生嘘はつかない。身の丈以上の見栄は張らない。口がさけても、愚痴は言わないから。 世界が赤や青や黄色の色で塗られているなんて、信じないから。世の中の風…

ブラックジャック、体内時計、内なる野生

それでは、このリズムを生みだすもとになっているのは何だろうか。それは、リズムに従って行動するよう体の中で正確な時を刻む「時計」があるからである。体内にある時計なので、これを「体内時計」という。体内時計が動物に行動のリズムを指示する。だが、…

ひとり遊び、あらねども、無心にして蝶を招き

良寛は五合庵の山中に住み、その生活は托鉢で得たわずかのもの、まさに詩にうたったように「嚢中三升の米、炉辺に一束の薪」しかない生活であったけれども、米と薪、このほかには何が要ろうかと達観して、草庵を訪れる鳥や、それを囲む木や竹や、雲や雪やを…

日の丸の秘密、3:4:5、視線の彼方

僕がこれまでにこの町の中で目にした反日メッセージというのは、末尾の図a(引用者注 長方形の中央に小さな赤い丸を書き、右上から左下へ斜線を引いた図)のような〈ジャパン・バッシング〉スティッカーだけである。これはかなり古い大型アメリカ車の後ろの…

天稚彦、玉手箱、神様の恋

物は無くて、煙空へ昇りぬ。かくて姉ども帰りぬ。三七日待てども、見えざりけれぱ、言ひしままに西の京に行きて、女に会ひて、物ども取らせて、一夜ひさごに乗りて、空に昇らんと思ふに、行方なく聞きなし給ひて、親たちの嘆き給はんことを思ふに、いと悲し…

遥かなるケンブリッジ、『国家の品格』、一条の軌跡

彼女は深呼吸を二度した。三度目の深呼吸の後、さすがに手に汗がたまったのか、掌をドレスの腰に押しつけた。そして表情を一段と厳しくすると、ガルネリを左肩にかついだ。いよいよである。私は心の中で、「行け」と鋭く号令を掛けた。 静まり返った中を、彼…